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『オール・イズ・ロスト』を観た

2014年04月15日 22:55

                        (Please click this photograph)
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                       ロバート・レッドフォード渾身の一人芝居!
 週末、ロバート・レッドフォードの『オール・イズ・ロスト』を観た。
 ヨットで大海原を航海中に事故に遭い、次第に命の危険へと追い詰められていく老境を迎えた男の8日間の姿を淡々と・・・それはほとんどドキュメンタリーのごとく・・・描いていく映画だ。
 出演者はレッドフォード一人だけ。それもほとんど台詞は無し。 息苦しい映画だ。 息詰まるではなく、息苦しい。 何故なら、やれることは全てやっているのだが・・・徐々に死は現実として迫ってくる情況を映像は映し出していくのだから・・・。 
 しかし、この映画、私としては近年稀にみる “心が震える” 映画となった。


   


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 スマトラ海峡から3150km沖。 “すべて失った……すまない”という男(ロバート・レッドフォード)の呟きが響く……。 男の呟きは続く・・・“皆を愛そうとした。しかし、私は傲慢だった” 心情の吐露とも謝罪ともとれる男の言葉。 静かな口調だが、なんとか自分に藍があったことを理解してもらいたいという心の叫びにも思われた。。。
 それは、男が人生で最後との思いもあってしたためた手紙の内容だ。 
 事の起こりは8日前。 インド洋をヨットで単独航海していた男は、衝撃音と水音で目を覚ます。 船側に穴が開き、船室に浸水していた。 海上を漂流していたコンテナが激突し、ヨットに横穴が開いたのだ。
 航法装置は故障、電源も失われ、無線もラップトップPCも水浸しで使い物にならない。 男は応急措置で船側の穴を塞いだりした。 だが、SOSの打電も出来ずに大海原にたった一人で彷徨う状態に置かれてしまった。
 雷鳴が轟いた。 雨雲が迫り、やがて暴風雨が襲ってきた。 男は必死でヨットを守ろうとするが、嵐が去った後には過酷な現実に直面する。 ヨットは決定的なダメージを受けていたのだ。 マストは折れ、応急措置をした穴はさらに大きな穴となって、船室内には肩までの水が入っていた。 もはや浸水は止めようがない。 男はヨットを捨てることを決意し、食糧とサバイバルキットを持って救命ボートに避難。 間もなく、ヨットは海の底へと消えていった。
 ここは一体どこなのか?助けはやってくるのか? ボートへの浸水、サメの襲撃、激しい嵐にもさらされ・・・。 男の唯一の希望は、ボートが流されている海流が、大型船の航路を横切ることだった。。。


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 冒頭述べたように、台詞はほとんど無い。 レッドフォードの声をまともに聞けるのは、ほんの一瞬繋がった無線でOOSを必死に伝えようとする時と、絶望感に苛まれて思わず “ファーーーック!”と天を仰ぎながら叫ぶ時くらいだ。 あとは、微妙な表情の変化と体の動きで見せていくレッドフォードの演技が素晴らしい。 冒頭の手紙の内容の朗読以外はナレーションは一切無し。 だから・・・観る者は、いつしかドキュメンタリーを観ているかのように、次第に情況が深刻になっていくのを時間経過と共に膨らむ不安と共に見つめているような気分になっていく。。。


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 ここから先は、完全にネタバレになるので、この映画を観たいと思っている方のために伏字とするね。 読みたい方は、反転させてどーぞ。

 
 男が期待した大型船の航路にボートが流されきた。
 最初は、昼間に大型コンテナ船がボートの近くを通った。 男は発炎筒を炊いて必死に呼びかけたが気付いてもらえず。。。 二度目は夜中にコンテナ船が近くを通った。 照明弾を打ち上げたが、またもやコンテナ船は通り過ぎていってしまった。。。
 やがて、大型船の航路からボートは出てしまった。 海水を蒸発させてビニールに結露させて舐めるように飲む水分しかなく、食料も底をつきかけた頃・・・男は、愛する者たちへ充てた手紙を書いて、ボトルに入れて海に流した。 ヨットも失い、大海原で命をつなぐ物をことごとく失った男。。。 体の衰弱が激しくなってきていた。 間もなく命を、人生を失う時がやってくる。 文字通り 全て を失う時が・・・。
 ヨットの事故から8日目の夜、弱った体でボートに横たわっていた男の目に灯りが飛び込んできた。 男は、重い体を起こして目を凝らした。 波間に確かに船の灯りが・・・。 小型船だ。
 発炎筒も照明弾もすでに尽きていた。。。 男は最後の賭けに出る。 海水を蒸発させて、わずかな飲料水を得ていたポリタンクにありとあらゆる可燃物を放り込んで火を点けたのだ。 やがて・・・その炎はゴムボート自体を燃やしていった。。。 男はボート上にいられずに海に飛び込んだ。 海上に顔を出した男に見えるのは・・・焼け落ちようとするゴムボートだけ。。。
 男は、精も魂も尽きたというように・・・海に沈んでいった。 次第に沈んでいく男の目に映るのは・・・焼け尽きようとするボートの丸い炎と上空に出ている月の灯り。 男は、それを見つめながら静かに沈んでいく。 自分の目で見る最後の光景を目に焼き付けようとするかのように。。。 すでに男の目に生気は・・・ない。 男は静かに沈んでいく。。。
 と、その時だ、海上に新たな灯りが現れた。 船だ。 船が燃えているボートの近くに来たのだ。 生気なく見開かれていた男の目が、二度、三度と瞬きをしたかと思うと、はっきりと意思を持った目に変化した。 男は、最後の力を振り絞って海上に浮上すべく泳ぎだした。
 海上間際、船の底が見えるところまで男が浮上した時、船の上から差し伸べられた手があった。 男は、その手を握るべく、自分の手を差し出した。。。


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 次々に襲い掛かって繰る困難に・・・折れかける心。。。尽きかける生への意思。。。 レッドフォード演じる男は、時に気を失いながら、時に疲れ果てて伏しながら・・・やがて、生きるための作業を再開する。 何度も。 何度も。
 その行動は、スーパースターのそれではない。 70歳をとうに超えた老人の動きだ。 劇的でもキビキビもしていない。 だが、淡々と確実に自分の出来る手立てを打とうと試みる。。。
 自分なら、ここまで出来るだろうかと・・・観ていてそう思わずにいられなかった。 諦めない。命ある限り。 希望を捨てない。可能性がある限り。 生き続ける。気力の最後の一滴まで。 そんな男の強さに圧倒される。
 人生と同じだ。 人生、時には “なんで俺なんだ” と思うようなアクシデントに見舞われることもある。 一生懸命に動き回っても、事態は好転せずに悪化していくこともある。。。
 だが、人生という大海原を公開する者は・・・それでも希望を捨てちゃいけない。 気力の最後の一滴を振り絞るように生きなきゃいけない。 レッドフォード演じる生きようとあがく男から、そんなメッセージが伝わってくるかのようだった。。。

 ラストシーン・・・映像を食い入るように見つめていて、思わず “あ、あぁぁ。。。” と、ため息と共に声が出てしまった。 そして・・・シートに座っていられないような衝動に駆られるように・・・心も身も震えた。
 ロバート・レッドフォードの身を挺すような渾身の演技に完全に囚われてしまっていたようだった。 素晴らしい映画を観ることが出来た。  
 この映画は、大海原で遭難した海上サバイバルを描きながら、実は人生そのものを語った映画だ。 その解釈が間違いないことは、エンドロールを観て確信した。


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 余韻に浸りながら、エンドロールの静かな曲に身を委ねていた。。。 キャストには・・・たった一行、たった一人だけロバート・レッドフォードの名があるだけだ。 そして彼が演じた男に名はない。 「Our Man」 だ。 「我らが男」とするよりも、「我々の代表である男」とする方が相応しいと思う。 逆に言えば、このようなことは、いつ誰の人生に起こっても不思議はないってことなのだと思う。 危機的な情況に追い込まれていってしまった時、結末を分けるのは・・・諦めない心と生き抜く覚悟だ。 そんな思いをこめた 「Our Man」 なのだと私は感じだ。

 ロバート・レッドフォード・・・役者として、監督として、映画界に大きな足跡を残してきた人だ。
 それだけではなく、サンダンス(おぉ!『明日に向かって撃て!』)映画祭を主催し、時代を背負うインディーズ作家育成に力を注いできた。 多くの逸材の発掘に貢献している映画祭だ。 
 しかし、これまでサンダンスから巣立った監督たちから、レッドフォードは役者として出演のオファーを受けることがなかった。。。 “実はずっと寂しく思っていたんだ” と、レッドフォードは本音を吐露してもいる。 この映画の監督J・C・チャンダーは、サンダンスで見出された監督だ。 本作は、レッドフォードのそんな念願を叶えた映画でもある。 それもあったのか・・・まさに体当たりの演技は、もう演技を超えた域にあったと見ていて思った。

 この映画、DVDやBlu-rayが発売されたら手に入れようと思っている。 心が折れそうな時に観れば・・・折れかかった心の添え木になってくれるような・・・そんな映画だから。


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コメント

  1. みみ | URL | ffVU29mw

    今頃…。

    初めまして。
    今頃になってコメントするなんて…、と、思ったものの、ついつい。

    私も今、観終わったところで…。
    …茫然としています。

    こんな映画があるんだ。
    素晴らしかった。
    疲れと感動で、静かに興奮しています。

    「他の人達はどう観たんだろう?」
    感想を聞いてみたくて検索し、こちらに出会いました。

    私は映画が大好きです。
    また感想伺いに来ます。

  2. Haru.Seion | URL | O7xVy9HA

    みみさんへ

    素晴らしい映画ですよね!
    レッドフォード渾身の不撓不屈の精神を描いて見せた映画って感じですね。
    大海原でたった一人・・・舞台では再現できない、映画ならではの一人芝居!
    素晴らしい映画だと思います。
    観た方からのコメント・・・うれしかったです。

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